外食

あの人の台所ー『~時々~すずきの』(本郷三丁目)

あの人の台所ー『~時々~すずきの』(本郷三丁目)

YouTube食育番組「らりほぅチョイス」プロデューサーの らりほぅです。
今月の【あの人とハナミズキ】は、東京・本郷三丁目にある『~時々~すずきの』。

『~時々~すずきの』のテイクアウト

 

「お1人様、だいたい3000円~6000円が主流ですかね」
と、鈴木料理長。予算に応じて、日替わりの会席弁当を拵えて下さるのだ。
ちょっとだけ贅沢な「おうちごはん」のお供になりそうなだ。

「~時々~すずきの」の御膳(おかず)

 

●鮎の煮びたし
愛知県産の鮎を昆布だし、薄口醤油、みりんで約3時間ほど漬け込んだ。
頭も骨まで食べられる1品。

●卵焼き
少し甘めの江戸っこテイストだけど、築地の卵焼きよりも甘くない。
日本人好みで、大人気のバラちらしに使用している卵焼きである。

●カマスのフライ
千葉県・船橋港で獲れるカマスを漁師から直送されたもの。鱸、太刀魚に力を入れており神経締めされた鮮度のよい魚を使う。なんでも神経締め技術はには“瞬〆”という商標まで登録しているほどの拘り。

●平目のからすみ焼き
平目を醤油、みりん、酒で地漬けをして最後にカラスミを纏わせる。カラスミは炙ることで香りを立たせ、見事な魚介の融合が出来上がった。

●獅子唐と玉蜀黍の衣揚げ
糖度の高い旬なトウモロコシにほんのりと塩を振り、甘みを助長させる。翌日に冷めても美味しかった。

「~時々~すずきの」の御膳(ごはん)

 

●穴子の黄身煮+加茂ナスの炊き合わせ
穴子に黄身をくぐらせて火を入れるもの。鰻の柳川を彷彿とさせるような穴子×卵の相性を確認できた1品
併せるは、穴子と一緒に似た加茂ナス。崩れることなく、口の中でほどよく噛み解き、茄子の生い立ちを感じる。

●白瓜の漬物
「~時々~ すずきの」では、ごはんもの供する漬物は気分と素材で決めている。赤玉ねぎのときもあれば「麹漬け」をすることもある。シェフの自由度が発揮される、新しいカタチのYOASOBIである。

●新生姜と枝豆のごはん
「~時々~ すずきの」の名物は、炊き込みごはん。新生姜とごはんを昆布だし、薄口醤油、みりんを少々合わせ、南部鉄器炊きこんだ。枝豆を最後に入れたら、女性にはたまらないだろう逸品となる。冷房で冷えたカラダを新生姜が温めて、枝豆で夏を始まりを感じさせてくれる。ランチでいただく弁当だけど、純米酒、飲みたくなる。

 

「~時々~すずきの」 お任せコース

先付け 3種

●夏野菜のゼリーがけ
バイ貝、つるむらさき、じゅんさい、ミニトマトを土佐酢ジュレで冷菜に。この日の炎天下に染みる、夏らしさ。じゅんさいも最後の旬の終わり。私のマネージャーは東京初の「じゅんさいの匠」の称号があるため、よく存じ上げている食材だ。
秋田県のじゅんさいに、茨城のつるむらさきとバイ貝が舌を涼しげに纏う。ミニトマトは…本郷三丁目産。つまり、自家栽培だそう。いいね、その言い方(笑)

●炙りカマスの棒寿司
寝かせが上手なカマスにワサビ醤油が塗られた1品。味がついているから醤油はいらない。そのまま1バイトで。

●トウモロコシのビール衣上げ
「え、ビール?」と聞き間違えたのかと思ったけど、やはりビール。夏の季語になりそうなビールで玉蜀黍を揚げる。カレーでお肉をビールで煮込むのは有名だけど、揚げ物でビールって、初耳だ。サクサクになるそうで、目から鱗であった。カレー塩がアクセントに、これまたスパイシーな夏の風物詩を、これほどまでに素敵に演出している。

料理長にお任せした純米酒でキックオフ

日本酒は純米酒しか体に合わない私を気遣い、この日は3種を合わせた。最初は、これ。

●伯楽星(はくらくせい) 純米大吟醸
宮城県の「新澤醸造店」が醸す、人気銘柄の【伯楽星】は、伊勢志摩サミット総理夫人主催の夕食会で提供された実力派。マスカットのようなフルーティーで柔らかな口当たりが、1杯目にぴったりの代物だ。“究極の食中酒”をうたっているだけあり、爽やかな余韻が引き締めって、魚の前菜の邪魔をしない盃となった。

 

お造りの盛り合わせ

 

テイクアウトでも紹介した船橋で“旬締め”された魚が御開帳する。鱸、太刀魚の炙り、〆サバ。
名脇役プレーヤーがこの、【胡瓜】だ。この胡瓜は一味も二味も違う。
胡瓜とは品種の配合をすることが一般的である。
「他家受粉性」の虫媒花をする野菜なので、異品種と交雑して、絶えまなく遺伝子が変化する特徴があるからだ。
つまり、単一の遺伝子では、歴史的な変遷をたどるのが非常に困難な弱い野菜なのである。
しかし、この胡瓜は、胡瓜のみで育てられている。
失恋したての女子高生のハートのようなデリケートな胡瓜をお造りが優しく包む。

店名の~時々~には、どんな意味が?

 

みょうがと青柚子の素麺

「神楽坂 しゅうご」の茨城県にある農園で収穫された茗荷を使用。
「素麺には昆布出汁を多めに使って、削りがつお出汁をほんの少しにしています」と鈴木料理長。

魚料理が中心の献立であるため、出汁でお客様を飽きさせない優しさが見えた。
なんて夏っぽいんだろう、これ。粋。食べた瞬間、心の風鈴が鳴り響く。

盃を変えて、お魚を待つ。「鍋島」純米大吟醸 短稈渡船

「鍋島 純米大吟醸 短稈渡船」

佐賀県鹿島市の「富久千代酒造」が醸す【鍋島】は、酒米の王様「山田錦」の系譜を辿った「短棹渡舟(たんかんわたりぶね」を使用。蔵主兼杜氏でもある飯盛直喜氏の指揮のもと、わずか数人で造っているそうだ。
爽やかで、香味高く、スーッと伸びる口当たり。このお酒で、メイン料理までいってしまった。江戸時代の宿場の雰囲気をそのままに漂わせる佐賀県鹿島市の町並みに、是非とも足を運びたいものである。

お造りの盛り合わせ

鮪(青森県)、鯛(岩手県)、平目(岩手県)。鮮度の良い魚を丹精に寝かせていた。「大傳丸」の6代目である大野社長の書籍も紹介して頂いたが、興味のある方は、是非いかがだろうか。

グルテンフリーの人にとって醤油は無縁だが、塩も醤油も使わなくて済む寝かせの技術が大変有難い。魚の旨味で日本酒「鍋島」がさらに進む。

ちなみに、盛り付けられた器は、茨城県の“笠間焼”。笠間焼(かさまやき)は、茨城県笠間市周辺を産地とする陶器だ。江戸時代中期の安永年間(1770年代)から作られ始めた笠間焼は、笠間粘土によって作られる。

笠間粘土は、笠間地区から筑波山にかけて産出する花崗岩(御影石)が風化堆積して生じた粘土であり、粘りが強く成形がしやすい。このまばらな色彩は、土に鉄を含むためだ。焼成後には、独特の有色となる。

上は、穂高 隆児 氏の作品である。(笠間粘土だけでなく多種多様な素材を使う)穂高 隆児さんは、17年くらい料理人をされていて陶芸家に転身したからこそ、料理人の使い勝手やシーンを想定したクリエイティブができると伺った。おうちごはんのシーンでもこうした食器のペアリングも醍醐味の1つかもしれない。いつか、穂高 隆児さんにも是非お目にかかりたい。

鮎の焼き浸し

頭までホロホロに溶けて骨まで柔らかい鮎が梅がゆの敷き布団の上に置かれる。
川魚の美味しさを改めて感じる一品。

鮎は、たいてい重湯と合わせることが多いが、そこに梅がゆにすることでスッキリ食べやすく。
夏のカラダが求めているクエン酸が、程よく鮎の苦味を滑らかに溶かす。素敵な料理でした。

盃を変えて、お肉料理を待つ。「乾坤一」純米吟醸

乾坤一(けんこんいち) 純米吟醸「ササシグレ」

「みちのくの小京都」 とも呼ばれる歴史ある町、宮城県柴田郡にある「大沼酒造店」が醸す【乾坤一】は、7月にしか販売されない季節限定品。使用米に「ササシグレ」を使う。

ササシグレはササニシキの父親にあたる米で、宮城で初となるササシグレのお酒であることで出逢うことができて嬉しかった。

香り、柔らな口当たりの秘訣は、大沼酒造店の「仕込み方法」だろう。
普通の蔵なら「大吟醸」を醸すような1t以下の小仕込みで、つくる点が特徴だ。

 

本州鹿の白味噌仕立て

宮城県の猟師、小野寺さんのジビエを直仕入れ。
処理スピードが早く、臭みはなくて、鹿の上質なたんぱく質が、私の筋肉と同化していくよう。

これ、本当に美味しかった。ここでも茗荷がアクセントで、鈴木料理長の手腕に恐れ入る。
鹿肉は粉を打って、じぶ煮のようなテイストで京都イシノの白味噌が包む。

アラ出汁と白味噌でコクがあるけど、優しい。
散りばめられた青柚子の皮が剛健な獣肉を使っているとは思えないくらい爽やかに醸す。
味噌と相性抜群の白なすと加茂なすが素揚げされて、食べ比べも楽しい逸品。

 

雲丹の炊き込みごはん

伝家の宝刀、当店のスペシャリティ。岩手県の工芸品である南部鉄器を用いてオーガニック栽培の宮城県ササニシキを炊く。蓋を空けたての窯の動画は、後日インスタグラムでアップする予定。
@rali4choice

この米は、「お米クリエーター」の佐藤さんのもの。
この雲丹の炊き込みとササニシキのsakeと合わせる見事なマリアージュ。
雲丹の量が素敵。飾りでなくて、雲丹が主役。


合わせるお椀は、メインの鹿が味噌だったので、味噌汁でなくて「すまし汁」×溶き卵。
こうした配慮が嬉しいですよね。

編集後記

鈴木料理長とは今回が初対面だったけど、白タンクトップに赤のハーフパンツで撮影に臨んだ。
麦わら帽子とセミとり網を左手にもてば、「僕の夏休み」に登場する少年のように見えたと思う。
猛暑の日差しで「ドレスコード」という言葉が僕の中で、蒸発してしまった。ごめんなさい。

子供のころ、僕の夏休み。大人よりも子供は睡眠時間が長いわけだから、日中の活動時間は短いはずだが、寝る前まで1日が充実していた気がするのは僕だけだろうか。24時間は平等で変わらないはずなのに、1日の終わりが寂しくて、お腹いっぱいの遊びで満たされていた。

30歳を過ぎて、経験と月日を重ねて、今日という1日を推測できてしまう自分がすごく、嫌。
パターン化から逸脱しようとしても、コロナウイルス感染症のおかげで、テレワーク生活に浪漫を見つけることが少ない。それも、きっかけで、この執筆の仕事を引き受けた。

子供のころ、1日の始まりはワクワクして、カレンダーの時を止めたかった。
18時間先の未来を知らずに生きていたから、楽しかった。
予想がつかないこと。それは、厳密にいうと予想をつけるほど人生経験をしていないということ。
だから、体感するものすべてが物珍しくて、新鮮だった。できれば、今でもそうありたい。

「すずきの」は、そんな、あの頃の時の過ごし方を思い出せてくれた。
喧騒が外れた場所で、穏やかな時間が流れる中で、ワクワクが止まらない。
鈴木料理長の夕食の献立は「おまかせ」だから、予想がつかず興味津々。
カウンター越しに店主と会話を通じて、新しい経験も料理と一緒に頂ける。
気づけば17:30から撮影に入って、帰るの22:00だったな(笑)

鈴木料理長の「なんでも挑戦」する性格が、素敵である。
遊び心を忘れずに、様々な食材を試している。
童心を忘れていないキラキラした瞳の奥に、調理される食材たちはどう映っているのだろうか。
おそらく、鈴木料理長だけの「夏休み」が、ずっと存在しているのだろう。

定休日に貸切していただいて、本当に有難うございました。ご馳走さまでした。

 

(著・らりほぅ/YouTube食育番組「らりほぅチョイス」プロデューサー)

※取材・執筆ご依頼→ 問い合わせフォームからお願いします。
※料理コース単価10,000円~の飲食店のみ、取材を承ります。