外食

あの人の台所ー『ビストロシロ』(広尾)

あの人の台所ー『ビストロシロ』(広尾)

YouTube食育番組「らりほぅチョイス」プロデューサー、らりほぅです。
今月の【あの人とハナミズキ】は、東京・広尾にある『ビストロシロ』。

『ビストロシロ』のテイクアウト

 

お土産にお持ち帰りできる、ロゼワイン「Mare Nostrum Rose / Domaine de l’Olivette(マーレ・ノストラム ロゼ ドメーヌ・ド・ロリヴェット ロゼ)2018」。ぶどうは、グルナッシュ45%、サンソー35%、ムールヴェードル20%のブレンド。このロゼは、必ずお店でもグラスで用意している定番物。

 

ちなみに、こちらは「オマール海老」のエチケットだが「イチョウガニ」「カサゴ」の3種類の印象的なエチケットラベルがある。

 

造り手が、魚介に合うことをコンセプトにしたロゼワインは、IGP Méditerranéeの認証、つまり「地中海」がイメージされている。「Mare Nostrum(マーレ ノストラム)」とは、ラテン語で、「私たちの海」という意味。店のコンセプトとロゼまでも合わせる『ビストロシロ』。粋ですね。

 

フルコースの余韻に浸りながら、おうちで魚介類と合わせて、楽しんでみてはいかがだろうか?

2020年9月のお任せコースを公開!

 

本日は、2020年9月1日~解禁されるおまかせコース(10,000円)にペアリング(4,000円)をセットにし、時季によって産地にこだわった海の幸の数々を事前取材させていただいた。

兵庫県産香住蟹とホワイトバルサミコでマリネしたMOZUKU酢

 

沖縄県の太もずくと兵庫県・香住蟹(紅ズワイガニ)を合わせてトマトのジュレが絨毯に、夏の足をそっと休めるようなスターター。もずくをフレンチビストロで使うなんて、まるでフランスのようだ。今、フランスでは日本の海藻が注目されており、フレンチのシェフから注文が絶えない。
魚介ビストロの名にふさわしい先見性が流石である。ホワイトバルサミコビネガーがアクセントで、酸味と甘みが計算されている。

ペアリング・泡

 

1本目は、「Nicolas Feuillatte Grande Reserve Brut(ニコラ フィアット グラン レゼルヴ)」。スターターとしての幕を開けるには、ちょうどいい辛口の泡。Brutは、そもそもあまり砂糖を加えずに醸造する泡なので、猛暑の喉の渇きにもすんなりフィットしていた。

北海道産 生雲丹とセロリラーヴのムース コンソメジュレと共に

 

今日は釧路の雲丹と、フレンチの常連さんの、根セロリのムースが調和する。雲丹に勝らず劣らず、根セロリの野菜の甘さが存分に発揮された料理。どちらの食材にも含まれた優しい糖度が舌を包む。滑らかなムースで甘い口当たりが砂糖を使わない野菜のパンナコッタとアイスクリームの中間のような歯ざわり。コンソメジュレに甘味と深みが合わさって、EXV.オリーブオイルで仕上げた。これ、相当なお気に入りです。

ペアリング・白

 

「La Chalada / Vinos Sanz(ラチャラダ / ヴィノス サンズ)2018」。これは、美味しい!今回の中で大好きになったワイン。雲丹に合わせるために選ばれた、このワイン。甘い口当たりで根セロリのムースの糖度も更に強く感じるような味わい。何よりもラベルがシュール。気鋭な現代芸術のアンディウォーホールのような独創的なグラフィックに一目惚れだ。五感悦ぶ、素敵なワインだった。

神経〆鮮魚のカルパッチョ 舟形マッシュルームのサラダ

 

カルパッチョに使う鮮魚は、仕入れで変わるが、今夜は北海道産の鮃(ヒラメ)。
柚子でマリネした鮃に塩・オリーブオイルでシンプルに。
爽やかな魚に業界では超有名な舟形マッシュルームで、グルタミン酸をプラス。
白ワインが飲みたくなる、素敵な風合い、伝わるといいな。

ペアリング・白 #2

 

「Sea Glass / Sauvignon Blanc(シーグラス / ソーヴィニョン・ブラン)2018」。バジルソースでシンプルなカルパッチョなので、酸が少しあって、爽やかで清々しいハーブの香りを活かした若々しいソーヴィニョン・ブランが選ばれた。樽をかけずに香りを楽しむクラシックなワイン。

鮑と肝タプナード和え 茗荷 有馬山椒 マイクロ花椒

 

鮑の肝とタップナード、こんなにまで素材を生かした鮑料理は初めてかもしれない。
鮑をバターで焦がす寸前までソテーして、白ワインで留める。
肝を贅沢に使い、タップナードに有馬山椒で、後味に「和」テイストが脳まで香ってくる。
ブラックオリーブ、ケッパー、アンチョビが定番構成のタップナードが、見事なまでに鮑と融合している。これは、美味しい。

キャビア素麺

 

え?素麺??(笑)お口直しに素麺が出たビストロが初めてで感動。
素麺にキャビアが斬新で、簡素な料理と思いきや、家庭では真似しづらいレベルの高い素麺だった。和出汁とイワシの魚醤を隠し味して、少量のつゆがオリーブオイルと重なり、ユニークで愉しい。
この日は、特別にペアリングとは別に「白瀧」の純米吟醸をオーダーしてみた。
素麺や魚介に合う日本酒も置いているのが、『ビストロシロ』。随所に隠れた和が素敵。

梅肉を挟んだ兵庫県 淡路産ハモカツ マディラソース

 

季語は夏でも、鱧は秋に二度おいしい魚である。江戸時代以前、京の都だったとき、内陸で海から遠かった京都で、夏に生で流通できる魚が鱧だけだったからという説があるが、関西では松茸と合わせて土瓶蒸しにする魚が、鱧。

つまり、実は、本当に身がおいしくなる時期は秋だったりもする。徳島の知り合いの鱧業者が言うには、秋の鱧は“金鱧”と呼ばれ、魚に脂がのり、お腹の部分が、シャンパンゴールドのように光沢が出てきるそうだ。

今回の鱧は、体長1.5kgほどの巨大な鱧。本社が神戸にあり、ネットワークを駆使して漁港から直接仕入れられるのが「ビストロシロ」の強みだ。活〆された鱧にパン粉をふって、ハモカツにする。

フォンドヴォーとマデラ酒を煮詰めただけの甘いコクのある洋風のマデラソースの甘味と、挟まれた梅肉の酸味のバランスがとても素晴らしい。

ペアリング・赤

 

「Castle Rock / Pinot Noir(キャッスル ロック / ピノ・ノワール)2013 」を最後に合わせる。ピノ・ノワールはワイン愛好家には「出汁」のようなイメージを表現する方もいるそう。梅肉とマデラワインのソース、肉厚な鱧に合わせるため、ここで赤のピノ・ノワールが選ばれた。

シャインマスカットとフロマージュブランの白和え フェンネルの香り

 

ここでグラニデ感覚で素敵なお口直し。豆腐でなくて、フロマージュブランで白和えしたシャインマスカットが、赤ワインビネガーで鋭く際立つ。甘ったるさがなくて、大人で、上品な口直し。タイミングも、とても良いです。

シロ特製!オマール海老のブイヤベース

 

魚介は日替わりで、今宵はオマール海老、オナガダイ、ハマグリ、白貝、沖しじみ。海老・ワタリ蟹をミクロ粉末になるまで炒めて、魚のアラや魚介のあらゆる部位を凝縮してブイヨンをつくる。

「隠し味は、魚の骨ですかね。」と斉藤シェフ。
210℃、40分くらい煎餅のようにローストして薫りを出して、野菜と一緒に煮込んでいるそうだ。

スープを煮込むこと3時間、ブイヤベースを口に入れた初めての私の感想は「スープドポワソンみたい」だった。斉藤シェフに翌日に再度取材をすると「ブイヤベースとスープドポワソンの中間を狙っているんです」とのこと。

塩を一切振らずに、この貝の塩味からミネラルが醸し出されて、恐れ入った。魚介の旨味が凝縮というと、安易な言葉で微妙なのだが、魚介を専門とする「ビストロシロ」の真髄が見える料理だ。

思わぬハプニングにも対応してくれる『ビストロシロ』

 

ここで、思わぬハプニング。といっても、あるあるか。同席していた先輩社長が赤ワインを零す。
皆さんも一度は経験がある「Yシャツと赤ワインのマリアージュ」最強に面倒な組み合わせである。
そのときは、面倒でもできるだか早めに色素沈着をとるのがベストである。
『ビストロシロ』ではこんなスティック色素沈着おとしてが用意されていた。
ご配慮、有難うございました。

最後のペアリング

 

通常は「Gary Farrell / Chardonnay (ギャリーファレル / シャルドネ) 2015」が提供されるが、私は赤が好きなので、赤の別ワインをオーダー。ショップマスターである織田さんは、「ブイヤベースは渋みが強い赤よりもコクと香りがまろやかなものが美味しく合わせられます」とのこと。
こうしてお客様の好みにも柔軟に適用ができるので、ペアリング初心者の方も、遠慮せずにソムリエさんに好みも伝えてコミュニケーションしても楽しいだろう。

 

魚介の出汁を使ったフレンチカレー。
スープカレーのように食べやすくサラっとしていて、〆として胃腸に抵抗ないカレーライスが最高である。お替わりしたい気持ちを抑えて、デザートに臨む心構えができた。
こうしたスパイス料理には“ゲヴェルツトラミネール”というブドウ品種が合わせやすいとのこと。

織田さん曰く、「調理法やソースの薫りとワインが合うかどうかを考えてペアリングを心掛けている」だそう。カルパッチョならばミネラルと酸味のあるワイン、グリルなら香ばしくて厚みのあるワインといったクラシックな教科書的なマリーアージュと共に、魚介ビストロだから発見できる新しい表現も教えて下さった。

濃厚なテリーヌショコラとキルギスの白蜂蜜アイス~無花果のキャラメリゼを添えて~

 

ガトーショコラでなくて、テリーヌショコラ!小麦不使用のグルテンフリーのスイーツ。
まるで生チョコレートのような柔らかさ。ナイフを入れて一緒にいただくスグリの甘酸っぱさが穂波のように舌を滑る。大好きな無花果を口に含んで、キルギスハニーと牛乳生クリームだけでつくったアイスで、火照ったカラダに嬉しい悲鳴。

70%カカオのビターチョコレートが大人っぽくて、濃厚だけど、カラダには軽くて、優しいギルトフリー。一緒にいたゲストは、僕の撮影中にもう食べ終わっていた…。Glutenfree×Guiltfree、最後までお洒落なマリアージュを愉しませてくれた。

編集後記

 

シェアリングエコノミーの用語に「メッシュ」という言葉がある。これはオフォト(写真共有サービス。後コダックに買収)を創業したエンジェル投資家のリサ・ガンスキーが著書で提示した概念だ。

 

サッカーボールを持ち歩く際に使う網がメッシュ。人々とインターネットを通じて繋がることで、どのようなコトが生じるかを述べた文章を指す。
人、モノが繋がる社会で企業がいかに生き残るかという視点で論じられている。

 

メッシュの特徴は、下記である

1、シェアする
2、webとモバイル情報ネットワークを駆使する
3、有形物や具体的なサービスを扱う
4、顧客との接点がSNS上にある

という点。これらをすべて備えたものは「フルメッシュ」と呼ばれる。

 

さて、2020年が過渡期の外食産業は、最もデジタルと遠いところにいそうであるが、本来はメッシュには最も向いている業界である気がした。

 

メッシュビジネスは、従来の製造したら終了ではなくて、戦略の中核は顧客のリピーター確保にある。顧客と継続的に関わることで得られるフィードバックをもとにサービスを改善して、ブランドを強化して売上をあげていく。つまり、レストランの味・サービス・コンテンツで正統なファンをつくっていく飲食のブランディング方法には向いているのではないか。いつだって、お客様とコミュニケーションを欠かさないのビジネスがレストラン業であるからだ。

 

『ビストロシロ』が現在の場所に移転する前、激務で心がメッシュのように穴が開いていた25歳。
それ以来の再訪を果たしたのが、今年の7月下旬だった。
2軒目の店として、脳裏に過った店がなぜか「ビストロシロ」だった。
再訪することが嬉しくなってしまって、厨房でシェフに挨拶をして、名刺を交換した。

 

翌日に御礼のメールをしようとシェフの名刺を見ると、メールアドレスの記載がなかった。
困った私は『ビストロシロ』のインスタグラムにDMを送った。そしたら直接、斉藤シェフが応えて下さった。従来、シェフと会話する機会はアイドルタイム時の電話とメールしかなかっただろうに。
時代は随分変わったものだと思った。
メッシュというビジネスモデルがビストロ界隈でも当たり前になる日も近いかもしれない。

『ビストロシロ』のホームページのスローガンを改めて拝読した。
「大好きな海の幸を、がむしゃらに食らう。日本に住む僕たちの等身大の食堂。僕たちの城(シロ)へようこそ。」と書いてある。

 

『ビストロシロ』で供されるのは、海の幸が豊富な地域からリアルに「地引きメッシュ」で獲られた鮮度のよい魚介たちだ。

 

「外食」すること自体が、何も悪いことではないけれど、他人の視線と会社の方針が気になる生きづらいご時世になった、今。

 

それでも僕には、網の目をくぐってでも、足を運びたい牙城が広尾にある。

ご馳走様でした。

 

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※料理コース単価10,000円~の飲食店のみ、取材を承ります。